設備工事とはどんな工事?工事の種類や電気設備のポイントを解説

2025/05/26

設備工事とはどんな工事?工事の種類や電気設備のポイントを解説

建物に欠かせない電気や空調、給排水などの設備工事は、ただの“配線”や“配管”ではありません。

快適な空間づくりや安全性、省エネ性能までを左右する、建築の根幹ともいえる重要な工程です。

「設備工事とは、具体的にどんな役割を担っているのか?」と疑問に思ったことはありませんか。

本記事では、設備工事の基本から種類、施工の流れ、求められる資格までを丁寧に解説します。

建設プロジェクトに携わる方や、設備に関する理解を深めたい方に向けて、現場目線で役立つ情報をお届けします。

設備工事の概要と重要性

設備工事の定義と目的

設備工事とは、建物内外に必要な電気・空調・給排水・通信などの機能を確実に組み込み、利用者の安全と快適を支える専門的な施工領域です。

これらの工事は建築物の骨格となる構造体にエネルギーや情報の経路を与えるため、計画段階から設計者・施工管理者・設備業者が協調し、機能要件と法規制を両立させることが欠かせません。

例えばオフィスビルでは、高圧受電設備から分電盤への配線計画や空調機の容量計算を早期に行うことで、後工程の変更リスクやコスト増を防ぎます。

最終的に設備工事が適切に実施されることで、省エネ性能や保守性が高まり、建物の資産価値が長期にわたり維持されます。

建築プロジェクトにおける設備工事の位置づけ

施工管理全体の中で設備工事は、意匠・構造と並ぶ三本柱の一つとして扱われます。

設備担当者は配線・配管スペースを確保するために建築図と干渉チェックを繰り返し、設計変更が発生した場合でも建物機能を損なわないよう調整します。

たとえば照明計画では天井仕上げの高さやダクトルートとの兼ね合いを踏まえ、現場での墨出し精度や吊りボルト位置を細かく検証する姿勢が求められます。

こうしたプロセスを通じて、プロジェクト全体の品質・工程・コストバランスが保たれ、施主の要求性能が確実に実現されます。

設備工事の計画と設計の重要性

計画段階では負荷算定やルート検討を行い、BIMやCADを用いて設備図を作成することで、配線・配管の衝突や余剰容量の過不足を事前に把握できます。

合理的な設計は施工時の作業効率を高めるだけでなく、維持管理段階における点検や改修のしやすさにも直結します。

例えば空調機械室を集中配置し、ダクト長を短縮する設計は省エネルギーに寄与し、風量バランス調整の手間も軽減します。

結果として、設備のライフサイクルコスト全体を抑えつつ、環境負荷削減という社会的要請にも応えることができます。

設備工事が建物の機能性に与える影響

設備工事の品質は室内環境の温湿度・照度・音響・通信速度に直結し、利用者の生産性や健康に影響を及ぼします。

配管の勾配不良が排水トラブルを招いたり、低圧幹線の選定ミスが電圧降下を引き起こしたりする例があるため、各種基準値を満たす施工精度が不可欠です。

加えて、最新のIoTセンサーやBEMSを導入することで、稼働状況をリアルタイムで可視化し、運用段階のエネルギーマネジメントを最適化できます。

こうした機能向上はテナント満足度を高め、長期的な収益性とブランド価値の向上に貢献します。

主な設備工事の種類

電気設備工事

電気設備工事は受変電装置から照明・コンセントに至るまで多岐にわたり、第二種電気工事士などの国家資格保持者が中心となって高圧・低圧双方の安全を確保します。

受変電設備の設置と配線工事

受変電設備は高圧電力を低圧へ変換し、分電盤を通じ各フロアへ電力を供給する重要インフラです。

設置計画では変電室の耐火性能や換気量を検討し、キュービクルとの離隔距離を確保することで感電・アーク事故を予防します。

また、母線ダクトやCVケーブルの配線ルートは建物内の負荷分布と将来増設を見据えて余裕を持たせ、電圧降下計算で断面積を決定します。

これにより停電リスクを低減し、維持管理時の点検スペースも確保されます。

照明・コンセント・電源設備の設置

照明設備ではLED化が標準となり、演色性やグレア制御に配慮して照度分布を設計します。

コンセント回路はOAフロアや医療施設など用途に応じた専用回路を分け、漏電ブレーカーを適切に選定することで事故を防止します。

さらに、デマンド監視システムと連動させることでピークカットを実現し、ランニングコストを抑制します。

結果としてユーザーの安全・快適性を高めながら、省エネ目標達成に寄与します。

太陽光発電・蓄電池システムの導入

再生可能エネルギーの需要拡大に伴い、屋上や壁面へ太陽光パネルを設置し、PCSを介して自家消費と系統連系を両立する案件が増えています。

蓄電池との組み合わせにより、非常時の自立運転とピークシフト運用が可能となり、電気料金の最適化とBCP強化を図れます。

導入時には逆潮流防止や系統保護協調を考慮し、電力会社との協議を円滑に進めることが不可欠です。

運用後はモニタリングシステムで発電量と劣化状況を把握し、長期的なメンテナンス計画を立案します。

空調・換気設備工事

空調・換気設備は室内に快適な温湿度と新鮮空気を提供するため、負荷計算とダクト・冷媒配管レイアウトが施工品質を左右します。

エアコン・冷暖房設備の設置

パッケージエアコンやVRFシステムの機種選定では冷房・暖房同時負荷と部分負荷運転効率を検討し、外気温度条件に応じた能力比を設定します。

室外機配置は騒音・排熱の影響を最小化し、配管長と高低差の制限内に収めることで性能低下を防ぎます。

ドレン配管は負圧区画を避け、サイフォン破封を防止するため適切な勾配を確保します。

竣工後の試運転では冷媒圧・電流値を測定し、メンテナンス計画をデータに基づき策定します。

換気扇・ダクトシステムの構築

換気計画は建築物衛生法やビル管理法の基準を満たす換気量を確保し、CO₂濃度センサー制御により省エネルギーを実現します。

ダクト工事では板厚・補強リブを適切に選定し、スパイラルダクトやフレキシブルダクトの使い分けで静圧損失を低減します。

防火区画貫通部には耐火ダクトや防火ダンパーを設置し、煙拡散を防止します。

完了後の風量測定でバランス調整を行い、計画値との誤差を±10%以内に収めることが望まれます。

中央空調システムの導入

大規模ビルでは熱源機械室にターボ冷凍機や吸収式冷温水機を設置し、二次ポンプ制御でエネルギー効率を高める中央方式が主流です。

BEMSと連携したインバータ制御により、季節負荷やテナント稼働率に応じて最適運転を行います。

配管系統では一次・二次ポンプ方式を採用し、ΔTの維持と流量バランスを管理します。

長期にわたる運用コスト削減のため、水処理装置と定期的な冷媒漏えい点検を計画的に実施します。

給排水・衛生設備工事

給排水・衛生設備は生活水準と公衆衛生を支える基盤であり、水圧・流量計算と排水勾配設計が衛生環境を左右します。

給水・給湯設備の配管と設置

給水方式は直結増圧や受水槽加圧など建物規模と水質条件で選択し、耐食性を考慮してステンレス鋼管や架橋ポリエチレン管を採用します。

給湯設備では高効率ヒートポンプ式ボイラーや太陽熱温水器を組み合わせ、再熱ロスを抑制します。

保温材の厚さを適切に設定し、結露・熱損失を防ぐことでエネルギーコストを削減します。

バルブ配置はメンテナンス性を重視し、系統ごとに止水できるよう分岐部にゲートバルブを設けます。

排水・汚水処理設備の整備

排水計画では汚水・雑排水・雨水を系統分離し、トラップ封水深さと通気管配置で悪臭逆流を防ぎます。

中継ポンプ槽や浄化槽を設置する際は流入負荷と浄化能力を比較し、定期清掃サイクルを設定して維持管理しやすい設計を行います。

敷地外公共桝への接続角度を調整し、流速を1m/s以上確保することで閉塞リスクを軽減します。

監視装置や遠隔警報システムを導入することで異常時の対応を迅速化し、環境負荷を最小限に抑えます。

衛生器具(トイレ・洗面台等)の設置

衛生器具の選定では節水型便器や自動水栓を採用し、ライフサイクルコストと環境配慮を両立させます。

バリアフリー対応として手すり位置・アプローチスペースを確保し、多様な利用者が安全に使用できるよう配慮します。

器具支持金具や排水接続部の耐久性を確認し、漏水試験後にシリコンシールで防水処理を施します。

匂いセンサー連動換気や個室内音響システムを組み合わせ、快適性とプライバシーを高める事例も増えています。

防災・消防設備工事

防災・消防設備は建物の安全性と法令適合性を確保するため、消防法と建築基準法の規定に沿って設置計画を立案します。

火災報知器・スプリンクラーの設置

自動火災報知設備は感知器の感度区分と検出エリアを設計し、配線方式にはアドレス設定が容易なP型やM型が用いられます。

スプリンクラーはヘッド間隔と温度定格を考慮し、揚水ポンプ容量を計算して放水圧力を確保します。

配管ルートでは耐震ブラケットを取り付け、地震時の揺れによる破断を防止します。

竣工時には水張り試験と感知器作動試験を実施し、消防署立会いで機能を証明します。

非常用照明・誘導灯の配置

停電時に視認性を確保する非常用照明は、避難経路上の水平面照度を設計基準に基づき確保します。

誘導灯はピクトグラムのサイズや設置高さを遵守し、蓄電池内蔵型と集中電源方式を使い分けることで保守負担を軽減します。

LED化により長寿命化が進み、定期点検では充電回路と蓄電池容量を測定して性能を維持します。

管理台帳を作成し、法定点検報告書に基づき改修計画をスムーズに立案できます。

消火器・消火栓設備の整備

消火器は建物用途や面積に応じた設置本数を消防法施行規則で算定し、耐食・耐圧試験に合格した製品を採用します。

屋内消火栓は放水圧力を0.17MPa以上確保し、ホース収納箱を避難障害とならない位置に設置します。

屋外消火栓・連結送水管は消防車連結口の位置と管径を計画し、ガス・電気配管との離隔距離を確保します。

定期点検では開閉弁動作と放水試験を行い、劣化部品は予防交換することで実効性を高めます。

通信・情報設備工事

通信・情報設備はオフィスや施設の業務効率とセキュリティを左右し、高速化・多重化・統合管理がトレンドです。

LAN・電話・インターホンの配線

LAN配線はCAT6A以上のUTPまたは光ファイバーを選択し、フロア毎のIDFとMDFを適切に配置してケーブリング効率を向上させます。

PoE給電機器の増加に伴い、電圧降下と発熱を抑制するためケーブル束ね本数を制限し、パッチパネルで管理します。

電話・インターホンはIP化が進み、サーバールームとUPSの冗長構成で信頼性を確保します。

配線経路ではEMI対策として高圧電線との離隔を守り、通信品質を担保します。

防犯カメラ・セキュリティシステムの導入

ネットワークカメラはPoEスイッチを活用し、4K解像度と夜間赤外線撮影に対応する機器を選定することで可視性を高めます。

映像データはNVRで冗長記録し、AES暗号化とアクセス制御で情報漏えいを防止します。

入退室管理は顔認証やICカードを組み合わせ、BMSと連携して警報を集中管理します。

工事段階では配管隠蔽と耐候性能を考慮し、屋外設置時の防水・落雷対策を実施します。

放送・映像設備の設置

館内放送はデジタルアンプとIPスピーカーを採用し、ゾーン別音量制御で案内放送と非常放送を両立します。

映像設備はHDMIマトリクスや無線伝送を活用し、会議室・ホール・サイネージ間で柔軟にソース切替を可能にします。

プロジェクターやLEDビジョンは輝度・視認距離を考慮し、天吊金具の耐荷重計算と落下防止ワイヤの設置が必須です。

完成後は画質調整と音響チューニングを行い、利用シーンに応じたプリセットを設定します。

設備工事の施工の流れ

設備工事の計画と設計段階

計画段階では基本設計から実施設計へ移行するプロセスで負荷計算・配線配管ルート検討・機器選定を行い、BIMモデルを活用して各業種間の干渉を視覚化します。

資材リードタイムや予算制約を加味しながら、発注仕様書を早期に確定することで後工程の手戻りを抑制します。

また、法定届出や高圧受電契約申請など行政手続きを同時進行で進めることで、スケジュール全体の最適化が可能です。

最終的に、機能・コスト・工期のバランスを整えた設計図書が品質保証の基盤となります。

施工準備と資材の調達

施工準備段階では工程表をWBS形式で作成し、同時進行可能な作業とクリティカルパスを明確化します。

資材調達ではケーブル・ダクト・衛生器具などをロット単位で発注し、保管スペースと搬入経路を確保することで現場混雑を回避します。

サブコンとのキックオフミーティングで安全管理・品質管理・情報共有体制を整備し、リスクアセスメントを実施します。

これらの準備により、現場作業の生産性向上と工程遅延防止が図られます。

各設備の施工手順と注意点

電気工事では躯体打設前にスリーブ位置をマーキングし、躯体貫通後の補強処理を行います。

空調配管はフレア加工部のトルク管理を徹底し、ヘリウムリーク試験で気密性を確認します。

給排水工事では配管勾配と支持金具間隔を遵守し、耐震金具の設置で振動対策を施します。

通信設備は光ファイバーの曲げ半径に注意し、OTDR測定で損失値を確認してから終端処理を行うことで品質を担保します。

試運転・検査・引き渡しの流れ

各設備の単体試運転で性能値を確認した後、統合シーケンス試験で相互干渉をチェックします。

品質検査ではサンプリング検査と全数検査を組み合わせ、法定書類や性能試験成績書を提出します。

施主立会いのもと竣工検査を実施し、指摘事項を是正後に取扱説明と保守マニュアルを引き渡します。

引渡後はアフターサポート体制を提示し、定期点検契約を締結することで建物の資産価値を維持します。

設備工事に関わる資格と法規制

必要な資格とその取得方法

設備工事に従事するうえで主要な資格には第一種・第二種電気工事士、電気主任技術者、管工事施工管理技士などがあります。

これらは学科・実技試験や実務経験年数の要件が定められており、資格取得により設計・施工・保守範囲が拡大します。

受験対策では過去問題の演習に加え、実技講習で工具の扱いに慣れることが合格率向上の鍵です。

資格を取得することで現場の信頼性が高まり、キャリアアップや報酬向上にも直結します。

関連する法規制と遵守事項

電気事業法・消防法・建築基準法・労働安全衛生法など複数の法規が設備工事に適用されます。

例えば高圧受電設備は技術基準適合義務があり、消防設備は設置基準と点検報告義務が課されます。

これらを遵守するためには、施工図段階で法適合チェックリストを作成し、行政手続きを期限内に行う体制が不可欠です。

コンプライアンスを徹底することで、安全性と社会的信頼を確保し、プロジェクトリスクを最小化できます。

安全管理と労働災害防止の取り組み

現場では感電・墜落・火災など多様なリスクが存在するため、KY活動やリスクアセスメントを日常的に行います。

安全帯・絶縁工具・防火シートの使用徹底に加え、朝礼でのヒヤリハット共有が事故発生率を低減します。

また、品質と安全を両立させるために4M変更管理を行い、作業手順書や点検記録をデジタル化して可視化します。

これらの取り組みは労働災害ゼロを目指すだけでなく、工期遵守とコスト削減にも寄与します。

設備工事の最新動向と課題

省エネルギー・環境対応設備の導入

ZEBやZEHを目指す建物では高効率熱源機や蓄熱槽、再熱除湿方式などの省エネ技術が導入され、エネルギー消費量を大幅に削減します。

環境配慮型冷媒や節水器具の採用により、温室効果ガス排出量と水資源消費量を同時に低減できます。

建物全体の環境性能評価であるCASBEEやLEED取得を視野に入れることで、投資回収とブランド価値向上が期待できます。

今後はカーボンクレジットの活用や再エネ証書取引により、環境経営を強化する動きが加速すると見込まれます。

IoT・スマート設備の普及状況

センサー連動の照明制御や空調自動最適化など、IoT技術が設備管理の効率化と省エネに貢献しています。

BACnetやModbus TCP/IPを活用したオープンプロトコル化が進み、マルチベンダー機器の統合監視が容易となっています。

クラウドBASにより遠隔監視・分析が可能になり、保守コストの削減と故障予兆検知の精度向上が実現します。

一方でサイバーセキュリティ対策の強化が求められ、ネットワーク分離や認証強化が課題となっています。

人材不足と技術継承の課題

設備工事業界では高齢化と若年入職者減少により、熟練技能者の確保が難しくなっています。

技能伝承にはOJTに加えてVR・ARを活用した仮想施工訓練が有効で、実機を使わずに安全教育と技術習得が可能です。

働き方改革として週休二日制や宿舎の改善を進めることで業界の魅力向上を図り、人材定着を促進します。

さらに、施工管理BIMやロボット配線システムの導入により、生産性向上と労働負荷軽減を両立させる取り組みが進行中です。

コスト管理と予算調整のポイント

資材価格高騰と円安の影響で設備工事コストは上昇傾向にあり、VE提案と長期保守費用を含めたLCC視点が不可欠です。

サプライチェーンリスクを見据えた代替材の選定や、モジュール化による現場工数削減がコスト抑制に効果的です。

工程短縮による諸経費圧縮も重要で、プレファブ工法やユニット化した機械室が注目されています。

これらの手法をバランス良く活用し、施主・設計・施工が一体となった価値創造型マネジメントが求められます。

まとめ

設備工事とは、建物の安全性や快適性、機能性を実現するうえで欠かせない工事であり、その計画から設置、運用に至るまで多くの知識と技術が求められます。

電気・空調・給排水・防災・通信など、それぞれの設備が持つ役割を理解し、現場に即した判断をすることが、プロジェクト全体の品質と効率を高める鍵となります。

本記事を通じて、設備工事の全体像を把握する手助けができたなら幸いです。

これからの現場管理や設計において、より確かな選択ができるようになることを願っています。

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    この記事を書いた会社

    株式会社 SANZE

    株式会社 SANZE

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