非常灯の義務とは?店舗で必要な設置場所や点検内容を解説!

2025/11/05

非常灯の義務とは?店舗で必要な設置場所や点検内容を解説!

店舗を開業・改装する際、「非常灯の設置は義務なのか?」と疑問に感じたことはありませんか。

災害時の安全確保はもちろん、法令に基づいた対策が求められるため、多くの方が戸惑いや不安を抱えています。

この記事では、非常灯の設置基準や判断条件、点検の義務まで、店舗運営に必要なポイントをわかりやすく整理しています。

非常時でも安心できる環境を整えるために、ぜひ最後までご一読ください。

目次

  1. 1.店舗における非常灯の「義務」を把握する
    1. -1.「非常灯」「誘導灯」「非常用照明器具」の違いと対象範囲
    2. -2.義務の根拠:建築基準法・消防法・自治体条例の位置づけ
    3. -3.店舗で必ず押さえる3要素(設置要否・数量/配置・性能基準)
  2. 2.設置が必要かを判断する条件
    1. -1.用途・面積・階・採光の分岐(物販/飲食/サービス)
    2. -2.地下・2階以上・窓なし区画・長い通路で義務が厳しくなる理由
    3. -3.テナント専有部と共用部の責任分担
  3. 3.何個必要かを決める実務基準
    1. -1.避難経路の歩行距離・見通し距離から導く台数算定
    2. -2.配置優先順位:曲がり角・分岐・階段・出入口・屋外連絡
    3. -3.天井高さ・間口・障害物を踏まえた配灯間隔の目安
  4. 4.明るさと点灯時間の必須要件
    1. -1.床面照度の基準(通路1 lx/出入口周辺2 lx)の考え方
    2. -2.停電時の自動点灯と点灯継続「○分間」要件
    3. -3.光源の選択:蛍光灯・白熱灯・LEDの違いと現在の主流
  5. 5.点検・報告の義務と運用
    1. -1.半年・年次の定期点検で行う内容と提出先
    2. -2.記録・写真・測定値の保存年限と不備時の是正手順
    3. -3.オーナー・管理者・テナントの役割分担を文書化する
  6. 6.罰則・指導とリスク低減
    1. -1.未設置・未点検で想定される行政指導と営業上の不利益
    2. -2.是正命令を受けた際の優先順位と暫定措置
  7. 7.まとめ

    店舗における非常灯の「義務」を把握する

    「非常灯」「誘導灯」「非常用照明器具」の違いと対象範囲

    非常灯・誘導灯・非常用照明器具はいずれも災害や停電時に人々の避難を支援する照明設備ですが、それぞれの機能と設置目的は異なります。

    非常灯とは、停電など非常時に一定時間自動で点灯し、周囲を明るく照らす照明器具です。

    主に通路や階段、避難経路に設置され、歩行を安全に保つために必要とされます。

    一方、誘導灯は「どこに避難すべきか」を明示するための標識照明で、避難口や通路の方向を指し示します。

    この誘導灯には矢印や「EXIT」などの表示があり、視認性を確保する役割があります。

    「非常用照明器具」は建築基準法で定義されている分類で、非常灯と同義で扱われます。

    これらは、設置される建築物の用途や構造により設置義務が定められています。

    例えば、ホテルや病院、飲食店舗など不特定多数の人が利用する施設では、設置基準が厳格になります。

    このように、非常灯や誘導灯はそれぞれの役割に応じた設置が必要とされ、明確に区別して理解することが重要です。

    義務の根拠:建築基準法・消防法・自治体条例の位置づけ

    非常灯の設置義務は、主に建築基準法および消防法、さらには各自治体の条例によって規定されています。

    建築基準法では、避難経路を明るく保つための非常用照明器具の設置が必要とされています。

    特に2階以上や地下の区画では、災害時の避難確保が難しくなるため、照明の設置が義務付けられています。

    消防法においては、火災時の安全確保として誘導灯との併設が求められる場合もあります。

    さらに、自治体によっては条例により、建築物の規模や用途に応じて詳細な規定を設けています。

    例えば、面積500㎡以上の飲食店には、より高い照度や点灯時間が求められるケースもあります。

    このように、法的根拠は複数の法令にまたがっており、それぞれの整合性を確認しながら設計・施工・点検を進める必要があります。

    新規開店や改装時には、建築確認申請や消防署への事前相談を行うことで、法令違反のリスクを回避できます。

    店舗で必ず押さえる3要素(設置要否・数量/配置・性能基準)

    店舗で非常灯を設置する際に重要なのは、設置が必要かどうかの判断、何台設置するかの基準、そして性能に関する条件の3点です。

    まず設置要否は、建物の階数や用途、採光の有無などにより決定されます。

    たとえば採光が取れない閉鎖的な区画や、地下1階にあるテナントでは非常灯の設置が義務づけられる傾向にあります。

    次に数量・配置ですが、避難経路に沿って一定の照度を確保できるよう、歩行距離や視認性を基に設計されます。

    階段・曲がり角・出入口など、人の流れが集中しやすい場所に重点的に設置する必要があります。

    そして性能基準としては、点灯時に床面で1 lx以上の照度を確保し、一定分間点灯を維持できるバッテリー搭載型が求められます。

    特に現在はLED光源が主流であり、省エネ・長寿命といった特性が評価されています。

    このように、非常灯の設置には多くの基準が関係するため、図面や避難計画と連動させた設計が重要です。

    設置が必要かを判断する条件

    用途・面積・階・採光の分岐(物販/飲食/サービス)

    非常灯の設置が義務となるかどうかは、店舗の用途や面積、階数、採光状況によって大きく変わります。

    たとえば物販店、飲食店、サービス業といった業態では、不特定多数の来客が見込まれるため、避難時の安全確保が重視されます。

    建築基準法では、一定面積以上の建築物や採光のない空間、2階以上または地下にある店舗に対して、非常用照明器具の設置が義務付けられています。

    具体的には、床面積100㎡以上の用途が「物販店舗」の場合、自然光の入らない場所での設置が必須となるケースが一般的です。

    採光が十分にある1階の店舗であっても、奥行きが深く照度が確保できない場所では、非常灯が求められる可能性があります。

    このように、建物の利用目的や構造、光の入り方に応じて義務の有無を判断する必要があります。

    地下・2階以上・窓なし区画・長い通路で義務が厳しくなる理由

    非常灯の設置がより厳しく求められるのは、避難が困難になりやすい空間だからです。

    地下階や2階以上、窓のない内部区画、そして長い通路は、火災や停電時に照明が失われると、方向感覚を失いやすくなります。

    とくに階段や曲がり角では、視界不良が転倒や群衆事故の原因となることもあります。

    これらの空間では、避難経路を確保するために、照度の維持と非常時の自動点灯が不可欠です。

    そのため、非常灯の設置義務が建築基準法や消防法で強化されており、条例でも細かく規定されることがあります。

    安全確保の観点から、非常時に視認性を保つ照明の存在は、命を守る重要な役割を果たすといえるでしょう。

    テナント専有部と共用部の責任分担

    商業施設や複合ビルなどでテナントとして入居する場合、非常灯の設置や点検の責任が誰にあるのかは明確にしておく必要があります。

    専有部、すなわち各テナントの店舗内に設置される非常灯については、基本的にそのテナントが設置・維持管理の責任を負います。

    一方、廊下や階段、共用通路といった共用部の非常灯は、建物所有者や管理会社が責任を持って対応するのが原則です。

    しかしながら、入居契約において曖昧な記載となっているケースもあり、トラブルの原因となることがあります。

    したがって、契約前の段階で「専有部の照明器具の設置義務」「点検報告の提出先」などを明文化しておくことが望ましいでしょう。

    特に消防署の査察や建築設備の定期検査においては、責任の所在が問われるため、文書化して共有することが重要です。

    何個必要かを決める実務基準

    避難経路の歩行距離・見通し距離から導く台数算定

    非常灯の設置台数を判断するうえでの最も基本的な指標は、避難経路における「歩行距離」と「見通し距離」です。

    一般的に、30m以上の避難経路では途中で視界が遮られないように複数の照明が必要になります。

    建築基準法では、非常灯の照明が隣接器具までの距離や照度が一定以上であることを求めています。

    照明の届く範囲内にあるか、または見通しが確保されているかどうかによって、必要台数を算出します。

    現地調査により、歩行経路における照度のシミュレーションを行い、必要最小限かつ効果的な配置を検討することが求められます。

    配置優先順位:曲がり角・分岐・階段・出入口・屋外連絡

    非常灯の配置には優先順位がありますが、最も重視すべきは避難行動における「方向判断」が必要なポイントです。

    具体的には、曲がり角や通路の分岐点、階段の上り下り口、出入口、そして屋外へ続く扉の前などです。

    こうした場所では、火災や停電時に方向を誤るリスクが高く、視認性の高い照明が命綱になります。

    とくに階段の上部・下部には必ず設置することが推奨され、必要に応じて誘導灯との併設も検討されます。

    また、店舗内の非常口に接続する部分には、非常灯に加え、通路の照度が確保されるよう配慮する必要があります。

    天井高さ・間口・障害物を踏まえた配灯間隔の目安

    設置する非常灯の間隔は、天井の高さや照明器具の明るさ、間仕切りや陳列棚などの障害物の有無によって調整されます。

    たとえば天井が高い場合は、照度が分散されやすいため、配灯間隔を短くする必要があります。

    逆に間仕切りがない広い空間であれば、ある程度間隔を広げても一定の照度を保つことができます。

    照明メーカーのカタログには、器具ごとの「推奨設置間隔」が示されているため、参考にしながら設計すると良いでしょう。

    また、陳列什器や壁などで光が遮られるエリアには、補助的に照明を追加することも有効です。

    適切な間隔で設置することにより、過剰な台数を避けつつ、安全基準を満たすバランスを取ることができます。

    明るさと点灯時間の必須要件

    床面照度の基準(通路1 lx/出入口周辺2 lx)の考え方

    非常灯の照度には明確な基準が設けられており、避難時の歩行安全を確保するため、照らす床面の明るさが重要視されます。

    建築基準法では、避難通路における非常灯の床面照度は1 lx以上と規定されています。

    また、出入口周辺など人の動線が集中する部分では、2 lx以上が望ましいとされています。

    この照度は、点灯後すぐに確保される必要があり、バッテリーの性能や器具の光源種類に影響されます。

    照度を満たしていない場合、点検時に是正を求められるケースがあるため、初期設計段階からシミュレーションを行うことが推奨されます。

    なお、照度は周囲の明るさや壁面の反射率などにも左右されるため、実地環境に応じた調整が必要です。

    停電時の自動点灯と点灯継続「○分間」要件

    非常灯は、非常時に「自動で」点灯し、かつ「一定時間」照明を維持する必要があります。

    建築基準法上、非常灯は停電などで常用電源が断たれた場合、自動的に非常用電源(内蔵バッテリー)に切り替わり、点灯を開始する仕組みでなければなりません。

    点灯継続時間の基準は「30分以上」が一般的であり、特定用途ではさらに長時間の点灯が求められる場合もあります。

    この要件は、避難完了までの時間や消防活動の初動時間を考慮して設定されています。

    バッテリーの劣化により点灯時間が短縮することもあるため、定期的な点検と交換が必要です。

    点検結果に応じて是正措置を行わないと、行政指導や建築設備検査での指摘対象となる可能性があります。

    光源の選択:蛍光灯・白熱灯・LEDの違いと現在の主流

    非常灯に使用される光源にはいくつかの種類があり、代表的なのは蛍光灯、白熱灯、そして近年主流となっているLEDです。

    蛍光灯は中程度の寿命とコストパフォーマンスのバランスが取れた選択肢ですが、点灯直後の照度が不安定なことが課題です。

    白熱灯は瞬時点灯に優れていますが、消費電力が大きく、バッテリーとの相性が悪いため現在はあまり用いられません。

    LEDは低消費電力・長寿命・瞬時点灯という点で非常灯に適しており、現在では多くの製品がLED化されています。

    また、LEDの方が照度管理がしやすく、設計段階でのシミュレーション精度も向上します。

    器具交換や新規設置の際は、将来的な保守負担も考慮してLEDを選定することが一般的です。

    点検・報告の義務と運用

    半年・年次の定期点検で行う内容と提出先

    非常灯は設置しただけでなく、定期的な点検と報告が法令により義務づけられています。

    建築基準法に基づく建築設備定期検査では「年に1回以上」の点検が必要とされ、消防法では「半年に1回」の点検が求められます。

    点検内容には、点灯状況の確認、バッテリーの劣化状態の測定、光源の明るさ、設置位置の適正確認などが含まれます。

    点検結果は、建物の規模や用途に応じて、建築主事(建築設備関係)や所轄消防署(防火設備関係)に報告が必要です。

    特に消防設備士などの有資格者による点検が推奨されており、資格者が点検記録を残すことで信頼性が高まります。

    このように、点検は単なる形式ではなく、機能維持と事故防止のための重要なプロセスとなります。

    記録・写真・測定値の保存年限と不備時の是正手順

    非常灯の点検を行ったあとは、記録の保存と適切な是正措置が求められます。

    点検記録や報告書は、3年間の保存が推奨されており、再検査や指導が入った際に提出できるようにしておく必要があります。

    保存内容には、点検日・点検者・測定した照度・バッテリー電圧・不備箇所の写真などが含まれます。

    万一不備が発見された場合、速やかに是正工事を実施し、再点検のうえ、完了報告を提出します。

    是正までの期間においては、仮設照明などで一時的な代替措置を講じることも必要です。

    こうした点検履歴は、防災意識の向上だけでなく、保険適用や建物管理においても信頼材料となります。

    オーナー・管理者・テナントの役割分担を文書化する

    非常灯の点検や報告に関しては、店舗オーナー・管理会社・テナントそれぞれの責任範囲を明確にすることが不可欠です。

    とくにテナントが複数入居するビルやモールでは、誰が点検を行い、誰が報告義務を負うかが曖昧になりやすい傾向があります。

    このような混乱を防ぐためには、契約時に「非常用設備に関する維持管理責任の範囲」を文書で取り交わすことが有効です。

    専有部の点検をテナントが担い、共用部は管理会社が一括で実施するケースが一般的ですが、例外もあるため注意が必要です。

    また、点検実施のスケジュールや報告義務の有無についても明記しておくと、行政指導時の対応がスムーズになります。

    役割分担を明確にし、互いの責任範囲を共有することで、リスクの分散と適切な管理運用が実現します。

    罰則・指導とリスク低減

    未設置・未点検で想定される行政指導と営業上の不利益

    非常灯の未設置や点検未実施が発覚した場合、建築主や管理者には法令違反としての行政指導が行われることがあります。

    具体的には、是正命令・指導書の発行・改善報告書の提出要請などが該当します。

    これらを無視した場合、消防法や建築基準法に基づく罰則や、建物使用制限、最悪の場合は営業停止処分につながるおそれもあります。

    さらに、火災や停電が発生した際に、避難中の事故が発生すれば、店舗や施設の管理責任が問われることにもなりかねません。

    その結果、損害賠償リスクや風評被害による売上低下といった、営業上の大きな不利益に直結します。

    このような事態を未然に防ぐためにも、非常灯の設置と定期的な点検は経営上の重要なリスクマネジメントとして位置づけるべきです。

    是正命令を受けた際の優先順位と暫定措置

    万が一、非常灯の不備により是正命令を受けた場合は、優先順位を明確にして段階的に対応していくことが重要です。

    まず対応すべきは、避難経路上の欠落や階段・出入口など重要箇所の未設置・不点灯部分です。

    次に、照度不足やバッテリーの寿命切れなど、機能に直接関わる部分を早急に改善する必要があります。

    対応が間に合わない場合や部品の調達に時間がかかる場合は、仮設照明や誘導員の配置など、暫定的な措置を講じることも許容されます。

    ただし、これらは一時的な対処であり、あくまで本設置や機能回復を前提とした措置であることを記録に残す必要があります。

    その後、完了報告を所轄行政に提出し、是正完了を確認してもらうことで、正式な対応となります。

    このように、非常灯の不備に対しては優先度をつけ、段階的かつ計画的に対応する姿勢が求められます。

    まとめ

    店舗における非常灯の設置は、避難時の安全を守ると同時に、法律に準拠した運営の要でもあります。

    設置の要否や台数、配置は、建物の構造や用途に応じて判断する必要があり、点検や報告の対応も欠かせません。

    日々の運営に追われる中でも、非常灯を正しく理解し、リスクを未然に防ぐことが信頼ある店舗づくりにつながります。

    まずは自店舗の状況を見直し、できるところから適切な対応を始めてみてください。

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